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ことの葉暦

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海王星の画家

ものすごく久しぶりに、渋谷に行って来ました。
人混みがとてもとても苦手な私にとって、渋谷は最も苦手とする街のひとつなのですが、それでも決死の覚悟で(?)出かけていくことがあるのです。

目的は、Bunkamura。

playhouseといった趣がとっても素敵なシアターコクーンも、アート好きには危険極まりない(=必ず何か欲しくなってしまう)bookshopも、駅前の喧騒を乗り越えて行くに十分値するのですが、一番のお気に入りは、ザ・ミュージアム。
シンプルに静かさに心を配って設えられた空間がうれしい美術館です。私の大好きな19世紀後半~20世紀初頭あたりのヨーロッパの美術(例えばアールヌーヴォー、ラファエル前派や象徴主義など)は得意なもののひとつらしくて、ちょっとばかりマニアックな、質の良い展示にここで何度も出会っています。

現在ベルギー幻想美術館を開催中。

大学時代の英語の先生は、「ベルギーにはカナダと同じぐらい有名人がいない。」と、どうやら皮肉らしいことを言っていました。(ちなみに彼はイギリス人。)
確かにその時とっさに思い浮かんだのは、エルキュール・ポワロとネロとパトラッシュ(・・・は犬だけど。もっとも「フランダースの犬」がこんなに有名なのは、日本でだけだそうです。)ぐらいではあったのですが、実はベルギーは、古くルネサンスの頃はフランドル絵画が栄えた地域の一部でもあったし、ヨーロッパを美術の多彩なムーヴメントが席巻していた19世紀末とそれに続く時代には、植民地資本による豊かさを背景にして前衛的な芸術が花開いていた地でもあったのです。

シュールレアリズムを代表する画家のひとりであるルネ・マグリットも、ベルギー人。
彼の描く、空っぽだからこそ原始の果てしないエネルギーのようなものを感じさせる美しい青い空は、私も好きです。
けれど、今回の一番のお目当ては、フェルナン・クノップフ。ベルギー象徴派を代表する画家のひとりです。

占星術も、「象徴」を扱うアルテのひとつです。
現代の、速さと物理的な量がむしろ重要視された情報社会では、文字や言葉や図像は、記号的なものになりがちです。「記号」とは、なにかを一対一に近い状態で明確に指し示し、表現するもの、といった感じです。
一方「象徴」(=シンボル)は、そこにこめられた世界の奥深さを、広大さを、イマジネーションにより希求させようとするもの、といった感じでしょうか。それに相対する時には、その世界で迷い、道を、己を失ってしまわないための知識や智恵が必要とされるところはありますが、イマジネーションの豊かさを堪能する経験を、私たちにもたらしてくれるものだと、私は思っています。

そのようなイマジネーション、特にそれが芸術と結びついている時、それは海王星のエネルギーであるとされます。
新たに惑星の存在が発見される時、その星のエネルギーは、その時代のエネルギーに強く共鳴していると言われますが、海王星が発見されたのは、1846年。象徴主義の先駆けともいわれるラファエル前派などが、花開き始めようとする時代です。

人々を幻想的なまでに深遠なイマジネーションの海へと誘うこの時代のアートの申し子たちの中でも、クノップフの作品はとりわけ、海王星的な美しさを醸しているように思います。
触れることができる気がしないぐらいに、淡く、儚いくらいに柔らかで、繊細な輪郭と色調。それでいて、眩暈がするように微細で精緻な描写・・・その絵の前に立つと、あっという間に浸され、のみ込まれ、それでいて少しの苦しさもなく、そこに心地よくたゆたっている感覚が、満ちてきます。
今回出展されていたのは、ほんの4点でしたが、何度も戻って観たりして、十分満たされて、帰ってきました。
海王星の画家_e0170845_13532928.jpg

↑写真はやっぱり購入してしまった絵ハガキと、チケット。そして、クノップフの絵が表紙に使われている、ローデンバックの本を、一緒に撮ってみました。やはりベルギー象徴派を代表する作家であったローデンバックとクノップフは、互いにインスパイアしあって、いくつかの作品を残しています。

海王星のエネルギーは、使い方を間違えると耽溺や中毒に陥ってしまいますが、リラックスさせ、流れを浄化し、感じることを洗練させてくれるパワフルな癒しの力を持っています。
来年には、幸せの星・木星が、海王星を守護星とする魚座に入っていきます。
例えば、海に行く。
アクティブにはしゃぐのではなく、波の音や、潮風や、水の気配に、身を委ね、感覚を浸してみる。・・・とか。
そんな海王星を感じる休日も、時にはオススメです。

海王星の休日の香り
   ローズウッド 2滴
   フランキンセンス 2滴
   ラベンダー 2滴

最後におまけ。
久しぶりに、渋谷から表参道の方へと歩いてみたのですが、あの辺りは、メインの通りを少しでも外れると、行き止まりだらけで、散歩には実はちょっと不向きなのです。
分かっていながら、散歩気分で、気まぐれに道を曲がってみたりしていたら、案の定行き止まり・・・。
でも、あれま・・・と思いながら振り向くと、雲の向こうからめったにない鮮烈さで、日の光がさしていました。
海王星の画家_e0170845_14241028.jpg

行き止まりでよかった!振り向かせてくれてありがとう!・・・と思いながら写真を撮っていたら、通りかかった、いかにもあの辺りで遊んでいそうなちょっと派手な感じの男の子が、つられて空を見上げ、「あ、空キレイ!」…と、立ち止まってやっぱり写真を撮っていました。
そういう連鎖って、いいですよね。
by leaf-child0802 | 2009-10-15 14:32 | お出かけの記憶
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