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ことの葉暦

leafstar.exblog.jp

わたしたちを、心地よく揺らすもの

音楽はもっぱら演歌・歌謡曲の類しか楽しまない父ですが、母と私のために、時々クラシックコンサートの招待券を持ち帰ってくれます。
「これがやりたいの。」と、音楽教室の前で母にお願いした3歳の頃の記憶を鮮明に持つ私。その場ですぐに教室へと私の手を引いて入り、申し込みをしようとしてくれた母。もっとも当時は「幼稚園のお受験」も珍しくない今とは違って、3歳では小さ過ぎて、すぐ入れるクラスがなかったのでしたが、無事4歳になってすぐに始めることが出来た音楽は、私に多くのよろこびをもたらしてくれる、大切なものになりました。
週末、久々に母と二人で、そんなクラシックコンサートのお招きに与かってきました。

某大手印刷会社が本社屋内に持っている、室内楽に程好い感じの、落ち着けるホール。若手ではかなり注目されている実力派、というストリングカルテットによるプログラムは、ハイドン・ブラームス・ツェムリンスキーという、古典からモダンまでを一気に駆け抜けるような、なかなかエキサイティングなもの。
中でもツェムリンスキーの楽曲は、「無調音楽」といわれるピースがチョイスされており、「腕の見せ所」といった感じでした。無調音楽というのは、一般的にクラシックというとイメージされるような「決まりごと」の安心感を放棄したところで表現されているようなところがあるので、本当に息のあった演奏でないと、不安だったり酷く落ち着かない気持ちになったりしてしまうのです。
けれどそこはさすが「注目の若手実力派」。まったく落ち着いた気持ちで、楽しむことができました。

私が小さい頃から親しんできたピアノは、リズム・ベース・コード・副旋律・主旋律・・・とあらゆるパートを一人で表現することが出来る、極めて自己完結度の高い楽器です。
けれど、どこへでも自分の楽器を持っていくことが出来ない大変さもあります。
中学からオーケストラのクラブ活動で始めたヴァイオリンは、新鮮な音楽の楽しみをもたらしてくれました。よりはっきりと手の中に、音の中にある、木の自然な質感と、空気が振動している感触。手に、身体に親しく馴染んだ楽器を連れて歩けるうれしさ。たくさんのひとりひとりの音が共に手を携えて、ひとつの響きとなってあたりを満たしていく・・・そんな心地よさ。
特にひとりひとりの存在感の加減をしっかりと、かつ、響きがひとつになるところにきちんとある約束の安心感でのびのびと楽しめる気がするバロック(代表的なのはバッハなど)や古典派(代表的なのはモーツァルトなど)の室内楽が、個人的には演奏に参加するのを一番楽しめます。

「モーツァルトを聴かせると野菜や果物が美味しく育つ。」とか、「牛のお乳の出が良くなる。」というお話を、聞いたことのある方も多いでしょう。
また、巻貝の構造などにみられる比率が、ギリシャ彫刻から流れ続けている絶対的な美の感覚に沿うものとして、私たちの目を楽しませるあらゆる美術作品の中に見つけられるというお話を、ご存知の方も多いかと思います。
ニュートンは、日の光をプリズムによって虹色に分けた時に現われる比率と、弦楽器で十二音階(クラシック音楽からポップミュージックまで、とても親しまれている、いわゆる西洋音階のことです。)を奏でる時の指のかたち(たとえばギターのフレットを見ると上手くイメージできます。)に現われる比率に、きれいに通じ合うものがあることに気付きました。「色」と「音」は、共に波の振動として私たちに伝わってくるものです。
「美しいもの」を表現する術の中にある約束が、意識してそうしたわけではなくても、きちんと自然の決まりごとに沿っている・・・自然と共にある安心感がちゃんとそこにあって、それを感じられる感覚がちゃんと備えられている・・・だからこそ、私たちは美しいものを楽しみたくなれるのかもしれません。
私たちの感覚が、迷いなく、淀みなく、「心地いい」と感じるもの・・・「美しい」というものを定義するとしたら、そんな感じなのかもしれないな、と思います。伝わってくる「波」に、安心して身を委ねて、揺れていることが出来るような・・・そんな感じなのかな、と思います。

心地よく揺れる香り
   ローズウッド 1滴
   ベルガモット 2滴
   フランキンセンス 1滴
by leaf-child0802 | 2009-07-13 14:43 | 素敵なものたち
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