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ことの葉暦

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あたたかな感触 前篇 本

ここ数日冬支度を怠れない寒さになっている東京です。

この冬一番乗りの北風が吹く中、ちょっと用事で出かけたら、六本木ヒルズのオリーブたちの、深くて暖かな色に丸々と熟した実が、寒気の嵐がばっちりお掃除した後の空から注がれるぴかぴかの光を受けて、見事につやつやとしているのに会えました。
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ケータイのカメラで撮った写真じゃちょっと分かりにくくなっちゃうだろうなあ…と思いながらも、たまらずに一枚。

その夜食事に行った先では、やっぱりオリーブを頼んでしまいました。

オリーブは、時間と手間を丁寧にかけて美味しい実になっていくことから、乙女座と響き合うところがある植物だという風に言われています。

丁寧に、美味しいものをつくる…。

最近出会った、ぴったりな本を今日はご紹介します。

「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

なんてあたたかでほっとするタイトルなんでしょう!もう絶対和める本に違いない!
その文字の並びに、やられました。ジャケット買いならぬ、タイトル買いです。

作者は吉田篤弘さん。
もしかしたら、「クラフトエヴィング商會の。」と言ったら、「ああ!」と思ってくださる方が多いかもしれません。
本屋さんへ行けば、その手による素敵な装丁で包まれた(つつまれた、でもいいけど、くるまれた、と読んでください。)本に、たくさん会うことができます。

「本好き」には、ざっくりとふたつ、パターンがあると思うのです。

パターンその一。
言葉の、知識の器として、運び手として、有用だと思っているから、という人。

パターンその二。
「本」という物質そのものが好きだから、という人。
ページの空白と、インクで書かれて並んでいる文字のバランスが描き出す眺めだとか。それを手に取る感触だとか。…が、たまらない、という人。
アナログと言われようがなんだろうが、そんな風に何かの感触をしっかり味わうことを愛している、という人。

インターネットがこんなにも身近に、手軽になって、出版業界は青息吐息…なこの頃ですが、「パターンその二」の人たちがいる限り、「本」という物がなくなることはない、と私は信じています。

…なんて言っている私は、もちろんパターンその二、です。
そして、吉田篤弘さんも、パターンその二、なんだろうと思います。
それが高じて、本を包むもの、だけじゃなく、包まれているものの方もつくらずにはいられなかったんだろうな、と思うのです。

この本に包まれているのは、吉田さんの幻想です。
ただ。
「幻想」とは、現実の手触りに固執することなく何かを想うこと、ではあるのですが、
ここにあるのは、とてもしっかりとした感触のある幻想です。
そして、それを語る文字の並び方には、感じがよくてきれいで、丁寧につくられた秩序があって、
そんな秩序に支えられながら、感触は、あますところなくきっちりと、それでいて心地いいのにちょうどいい加減で、配されています。

秩序に支えらた、心地よさ。
そういうものをつくって差し出せるようになるまでには、とってもエネルギーがいるのだろうけれど、それを受けとるものにとっては、それはもうただただとっても安心なものに、なっているのでした。

ゆっくりと時間をかけて、あますところがないように、楽しんで読みました。
深いところまでしっかりとあたたかくなったみたいな、感触が残っています。
まるでスープを飲んだみたいに。

…というところで、明日の後篇 スープに続く

丁寧につくられた本の感触の香り
   ラベンダー 2滴
   クラリセージ 1滴
   マートル 1滴
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by leaf-child0802 | 2009-11-04 14:00 | 本棚 | Comments(0)
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