犬も歩けば、棒、ならぬ大使館、にあたるこの辺り。
いわゆる「G=great~」(G7とかG8とかG20とか)と呼ばれている国の大使館は、やっぱりさすがの門構えだったりして、見ごたえがあっておもしろいのですが。
そんなひとつ、フランス大使館の敷地の一部が売りに出されたのを機に、そこで取り壊しを待つばかりの古い庁舎が、practicalなアートの場として、その創造者と鑑賞者に開放される、というおもしろそうなイベントが、現在行われています。
題して「No Man's Land」。
芸術の都、を自負し、かつ個人の自由を高らかに謳い続けるフランスらしい企画だなあ…と思うのですが、こだわりを持ってつくられ、大事に使われてきた、古くて、しかも滅多に入ることができない類の建物に自由に入れる、というのは、それだけでもワクワクすることで、ちょっと探検みたいな気分で、覗きに行ってきました。
↑エントランスからして、すでにこんな状態。「大使館」の、ちょっと偉そうで、厳重に守られていて、近寄り難い、といった本来のイメージとはかけ離れた、なんだか愛嬌があって、興味をそそる感じになっています。
↑この辺りの広い敷地の大抵は、もともと大名のお屋敷だったので、お庭にはいい感じに歳月を重ねた樹がたくさんいます。
そんな中に、昇ったばかりの満月みたいに、忽然と現われた灯り。
↑セキュリティのための造り、なのでしょうが、ちょっと日本的な意匠、にも見えてきます。
↑かと思えば、屋上には、なんだかおどけたような、可愛らしいオブジェが…。
no man's land。どの人のものでもない場所。
どこの国の大使館もそうなのか、は分からないのですが、中は個室がズラリと並んだ造りになっていて、アーティストの各々が、それぞれに自分のスペースをがっちり確保できるみたいになっていました。
たくさんの部屋に、たくさんの世界が展開していて、その自由な百花繚乱ぶりは、たしかに「no man's land」っぽいのかなあ、とは思うのですけれど、その世界は、ひとつひとつがenvelopされているような感じもして、そういう意味では、そこは「○○(例えばアーティストAさん)'s land」な、気もします。
そこここに、例えば「~日の~時からここでパフォーマンスをするので、モノを置かないで!!」などの貼り紙があったりして、人間という生きものは、やっぱりその場所が誰のものなのか、ということに、拘らずにはいられないのかもしれません。
俗的な言い方をすれば、そこは、これからそこを再開発してコンドミニアムを建てる野村不動産のもの、で、しっかりその大きな広告が掲げられていたりもしていました。
この世界に共に生きるものたちの間には、距離、というものがどうしても必要とされます。
それぞれが、安らいでいるためのスペースを、たしかにするために。
自分たちがそんなに強くない、ということを知っているから。
たしかなスペースがあることを信じられている、ということが、怖れから自由であるために、平和であるために、やっぱり必要なのです。
多くの生きものが「テリトリー」という、それぞれのスペースを守る感覚を持っています。
中でも人間は、ただ互いがその感覚を持っていることを信じることだけでなく、他にもいろんなものに頼って、その場所が誰のものであるのか、を、たしかにしようと拘ります。
それは、人間が、自分たちがそんなに強くない、ということを、一番知っている生きものだからなのかもしれません。
けれど。
その場所が自分のものだと思うから、大切にする一方で、
人間は、その場所が自分のものでないと思うから大切にすることも、するのです。
そこには、敬意や尊重や慈しみの感覚が、きっとあるんだと思います。
その感覚を、大切にできるのであるならば。
世界はほんとうは、もっとずっと平和でいられるはずなんじゃないか、と、ふと、思いました。
平和なスペースの香り
カモミール・ローマン 1滴
プチグレイン 2滴
レモン 2滴