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ことの葉暦

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いのちあるモノ 追記

またあらためてお話するかもしれませんが、今月は歯医者に通うハメにおちいっていました。
ちょこちょこと待っていないといけない時間があるのと、ちょっとでもリラックスした気持ちを繋ぎとめておきたいから、という理由で、堀江敏幸さんが書かれた、ひとつひとつが短くて、スタイルが彩々のものたちが集められている文庫本を必ず持参していたのですが、歯医者さんの、どうしたって多少は身構えて座ってしまう治療椅子の上にいながら、つい微笑まずにはいれらなかった一節を紹介します。
十三年愛用してきた万年筆が、ついに手の施しようがないところまで壊れてしまった時、堀江さんがしたことについて。

「私は半べそをかきながら水道水で汚れを洗い落とし、綿を敷いた透明のプラスチックケースに遺筆をそっと横たえて、静かに手をあわせた。」
(中公文庫「一階でも二階でもない夜 回送電車Ⅱ」収録「十三年」より)

その万年筆は、堀江さんにとってまぎれもなく、いのちあるモノ、だったのでしょう。

堀江さんの純心さと、そこに満ちている愛おしさと感謝の気配に、微笑んでしまうと同時に、ついほろりとしそうにも、なったのでした。

とても、幸せな世界だな、と思いました。
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by leaf-child0802 | 2010-02-27 15:13 | 素敵なものたちのこと | Comments(0)
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